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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 70

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先日、「洋服って、シルエットだけで、(ブランドの)独自性を出せるの?」ということが話題になりました。

この問いに対するボクの考えは、「出来る、と言えば、出来る」です。

まず、前提として、こういう場合でのシルエットの話は、ジャケットのシルエットを指すことが多く、ここでは、ジャケットのシルエットに限定します。

「誰もが、一見しただけで、あるいは、一度着ただけで違いに気づく」ということは、現実にはありません。「誰もが気づく」ような分かりやすい話はなく、一方で、シルエットだけで独自性を出すことは、地道な手間がかかります。

「洋服の付加価値」とは、「誰もが気づく」わけではないことに手間を惜しまないことによってもたらされると思いますが、それだけの手間をかける価値があると考えるかどうかは、作り手によります。

どこかの出来上がったジャケットを見本にして、それから型紙をつくることは珍しいことではありません。シルエットをコピーした(パクった)服は世の中にたくさん出回っています。商標などとは違い、シルエットのオリジナリティを、法的に守ることは出来ません。また、ブランド独自のシルエットが、全く一つの形であったり、一つの計算式から算出しているわけではないので、「ある一定の、シルエットの傾向」ということになりますが、それでも「シルエットだけで、独自性を出すことは、出来る、と言えば、出来る」と思います。

図1は、ボクが服の寸法やシルエットを考える時に最低限チェックしている箇所です。青の線の上着丈、袖丈は、ここでは重要ではなく、赤い線に注目して下さい。



「シルエットを考える」ということは、赤い線がそれぞれ何センチかということと、それぞれの線の長さの比率や差を検討する必要がありますが、多くの場合、「独自のシルエット」というのは、この赤の寸法以外の、寸法の関係や線の流れにあります。

図2のジャケットで意図したシルエットの一部が「青い線」です。 この青い線が唯一の正解というわけではなく、他のバリエーションとして赤い線のシルエットなどが考えられますが、これらの組み合わせが、「独自のシルエット」になります。

また、「シルエット」は、型紙の形だけでなく、使用素材や、芯など構造や、仕立て方による影響もあり、型紙だけを考えればよいわけではなく、これらを複合的に考えるということになります。なので、冒頭の「出来る、と言えば、出来る」というのは、「簡単に出来るわけではない」ことも意味します。