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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 68

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図1のようなデザインの場合、赤い線の前端が、縫い目アリになっている服と、縫い目ナシになっている服があります。



縫い目アリの場合の型紙は図2、縫い目ナシの場合が図3のようになって、最近は、図2のような、縫い目アリになっている服の方が多いように思います。

このデザインに関しては、出来上がってしまうと、どちらにしようと気づかれない可能性もありますが、「どちらかを踏襲すれば良い」「どちらでも良い」というわけではありません。
一方で、「どちらの方法がより優れている」といった優越もありません。
使用する生地や、デザインのディテールなどの条件によって、どうするべきかを決めましょう。



まず、基本的な前提として、生地などの条件が同じなら、縫い目アリの方が、「厚く」「硬く」「重く」なり、このことによるメリット・デメリットは、多くの場合、生地によって異なります。

これが、「最近は、縫い目アリになっている服の方が多い」ことの主な理由で、時代とともに、生地が薄く軽く柔らかくなる傾向があり、前端部分を相対的に「厚く」「硬く」「重く」することの必要性が増してきているからです。
現実には多くの場合、「重く」の項目は無視して構いませんが、「厚く」「硬く」は考慮する必要があり、仕上がりの違いは無視できません。



また、「最近は、縫い目アリになっている服の方が多い」もうひとつの理由として、「デザインの汎用性が高い」ことが考えられます。
「前端の縫い目ナシ」ということは、原則として「前端が直線」であることが前提となり、図4のような裾のカーブはできますが、あまり相性が良くありません。

一方で、「前端の縫い目アリ」では前端のデザインは自由で、したがって、「どんなデザインにも対応できる構造」ということからも、「前端の縫い目アリ」に統一させる傾向があります。
また、比翼のデザインにする場合、縫い目のあるなしで、それぞれ適した仕立て方があります。

「端」の縫い目を「中心」に置くと、決してどうでも良い「端」の問題ではなく、さまざまなバランスを考えながら、決めていく必要があります。