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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 65

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洋服作りって、速い時間軸で流れるファッションとしての変遷の他に、より遅く流れる変遷があります。
その遅い変遷は、普段は意識しなくても困らないので、多くの人にとって知る必要はないと思いますが、誰かが意識しておかないと時々問題が起こります。

例えば、ミシンのない手縫いの時代と、大半の工程がミシンな今とでは、洋服作りのルールが異なります。また、生地が徐々に薄く柔らかくなってきていて、それに対応するように作り方が徐々に変わってきましたし、生地が希少だった時代と潤沢な時代でも異なります。


これらの遅い変化の多くは、デザイナーが発想したものではなく、すぐに洋服のデザインが変わったりはしませんが、間接的な影響から徐々にデザインが変わっていきます。

手縫いとミシンのように一線を画す変化や、生地の性質のような段階的な変化もあり、そんな変遷のなかで、ボクは、「接着芯」が最も重要な変化の一つだと思っています。


図1の前身頃、図2は「非接着芯(毛芯)」、図3は「接着芯」の位置の一例を記しましたが、非接着芯(毛芯)は、「基本的に、身返しや裾縫い代などの服の裏側に当たる場所には貼らない」「縫い目で切り落とす」に対し、接着芯は。「先に服の裏側に当たる場所から貼る傾向がある」「縫い目では切り落とさない」などが大まかな特徴になり、これらの変化は理由としては、「望まれる服の硬さ、重さの変化」「制作過程の簡略化」などが考えられます。


個人的に、日本語の「仕立てる」という言葉は、「非接着芯(毛芯)」の服を作る時に使うものだという印象があり、時代の変遷によって、「仕立てる」から、単に「つくる」に変わり、接着芯によって洋服作りのルールが大きく変わった気がしています。


では、「今後起こりえるルールの変化は何だろう?」と想像してみると、「ミシンではなく無縫製による接合」や、「3Dプリンターによる服作り」などが考えられ 、すでに一部の洋服作りに採用されていますが、現在の接着芯やミシンのように標準のものになるのか?
さて、未来はどうなるでしょうね。