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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 55

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最近SNSで、あるブランドのワンピースの「ボタンホールの開け方が間違っている」と投稿したところ、ちょっとした反響がありました。
正確には、「間違っている」ではなく、「このデザインなら、自分は絶対にこうしない」ですが、「ボタンとボタンホールの関係」について、前中心の開きを例にして、基本的で機能的なことを、改めて考えてみようと思います。

ボタンに対して、ボタンホールをどう開けるかを分類すると、【1】のように、「ボタンホールを、ボタンに対して『中心』に開けるか、『端』に開けるか」と、「ボタンホールを『横』に開けるか、『縦』に開けるか」の4つに分けることができます。
「端に開ける」は、さらに「左右」「上下」に分けられますが、ここでは一つのものとして考えます。
他に、「斜めに開ける」という選択肢もありますが、ここでは触れません。


機能面から考えるボタンに対するボタンホールの位置・方向は、【2】のように、左右の身頃が外側に開くこと【A】、左右の身頃が上下にズレること【B】を、同時に防ぐことが目的になります。
洋服の構造上、左右の身頃が内側(【A】の矢印の逆方向)にズレる可能性はありますが、ボタンホールの位置・方向を決めるときには考えません。


【3】は、【A】が一律にボタンホールを横(画面上で左)に開けたもの、【B】は縦(下)に開けたものになります。
【A】は上記の条件を満たしていますが、【B】は、縦にズレる可能性があるので、条件を満たしていないことになります。

【4】は、【3B】の下から一部のボタンホールを上下逆にしたもので、こうすることによって、ボタンホールとしての機能を満たすことができます。
ちなみに、「いくつ、逆方向にするか?」は、機能的にはいくつでも構わなくて、個人的には【A】のように一番下のみ逆方向にしています。


【5】は、【A】は【4】と同じ、【B】は、裾を閉じたデザインで、【B】の場合は、身頃が縦にズレることはないので、縦のボタンホールであっても、逆方向のボタンホールは必要はありません。

【6】は、一番上のボタンホールが横、それ以外は縦、【A】は真ん中、【B】は下にボタンホールで、シャツなどの小さなボタンでは【A】の方法がとられていますが、ボタンが大きくなるにつれ、縦のボタンホールが横方向に開くため、【B】のように端に開ける必要があります。


ボタンホールの位置・方向を検討する機会はあまりなく、普段は意識しないかもしれませんが、デザインによっては、改めて考える必要がでてきます。
その時に、「左右の身頃が外側に開くこと、左右の身頃が上下にズレることを、同時に防ぐことが目的である」ということを認識できていれば、間違うことはない思います。