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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 53

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洋服に限らず、何かをつくるときには、多くの場合で「精度」は大切な要素になります。

「正確に作られている」≒「良いモノ」ということで、そのためには、「高精度に作る技術」は大切ですが、それ以前の「違いを見分けられること」が大切です。

図1、図2を見てください。
「a」と「b」では、どちらが長いか分かりますか?


横に線を引いてみるとすぐに分かると思いますが、図1は「b」の方が長く、差は2%、図2は「a」の方が長く、こちらは0.4%と、図2の方が5倍差が少ないです。


人間は、図1のような離れたところにある長さの差よりも、図2のような隣り合っている長さの差の違いに対して敏感で、これらの感覚的違いに対応するために必要な「精度」は異なり、前者を「絶対精度」、後者を「相対制度」と、分けて考えると良いと思います。

この「絶対精度」「相対精度」の要求度や優先度は、作るモノの分野によって異なり、洋服では「絶対精度」はあまり要求されません。
また、生地という不安定な材料を扱う以上、高い「絶対精度」実現させるのも難しく、「相対精度」の優先度合いの高い分野の一つだと思います。

なので「『絶対精度』が高いことは望ましいど、あまり気にしても仕方がない」「『相対精度』は目立つので、高レベルな服作りには、高い「精度」が要求される」ということになります。
また、「絶対精度」に意識が行き過ぎてしまうと、時間がかかるばかりで、かえって「精度」が低く、完成度の悪いモノに見えることもあります。

「正確に作りましょう」という言葉は、それ自体は正しいけど、「絶対的精度」「相対精度」を分けて考えるべきだと思います。

ちなみに、実際の洋服を仕立てる段階と、型紙の段階とでは、これらのバランスが異なり、型紙の段階では、やや「絶対精度」の優先度が高くなる、と考えるといいと思います。