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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 52

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仕立てによって、生地の表面の耐久性を上げる方法はなく、洋服の劣化は防げませんが、どこか一箇所が破れたような場合は、縫い方を疑うべきです。
洋服の仕立て方を決めるときは、仕上がりの「強さ(縫い目が破れない)」「重さ」「厚さ」「美観(好みはありますが)」と、「手間」とのバランスを考えることが基本となり、追加する補強材料がある場合は、時代による扱い方の変化もあます。

では、縫い方を考える例として、図1のような途中まで縫われていて、その下が「タック」になっている型紙を想像してみてください。

図2は裏から見たところで、図1に従うと、赤い線を縫うことになりますが、この縫い方はおススメできなくて、理由は、タックの先端にかかる負荷が大きく、糸が切れたり、最悪の場合、生地が破れるからです。


では、どうすれば良いかと言うと、「タックの先端にかかる力を小さくすれば良い」、ということになります。

図3は、タックの先端から直角に縫う、図4は、斜め下に縫っています。
これらに実際の強度の差はほぼありませんが、理論的には後者の方が望ましい縫い方になります。


図5は、図4の角をカーブに変えた縫い方で、より望ましい縫い方だといえます。
なぜなら、表から見て同じでも、角がない分、より負荷の集中が起こりにくいからですが、手間は余分にかかります。

図6は、さらに裏から芯を当て補強したもので、図5・6まで必要かどうかは、かけられる手間や、使用する生地などによりケースバイケースで、特に図6は、裏地のない仕立て方では、ほとんど用いることはありません。


個々の縫い方を、わざわざ毎回検討する必要はなく、すでに定着している決まった方法で構いませんが、望まれる形や、生地の性質などが変わったときには、縫い方も再検討することになり、その場合、上記の「仕立て方を決めるときの基本」をハッキリと意識する必要があります。