どの箇所でも、この現象は起こり得るのですが、服を作るときに発生しやすく、特に気をつけないといけないのは、それぞれの縫い目の部分です。
服は、縫い目の箇所の方が分厚いので、図1のように、縫い目にアイロンをかけると、その縫い代の部分だけを余分に押さえてしまったり、つぶしてしまったりして、「アタリ」が発生する可能性があります。
1-1.縫い目の断面
※赤が生地、黒が糸です1-2.アイロンをかけると……。
※実際はこんな極端にはなりませんが。
「アタリ」は、生地が黒っぽいほど、表面が柔らかいほど、分厚いほど起きやすく(目立ちやすく)、また素材によって、「アタリ」の出やすさも、一度「アタリ」が出た状態から元の状態に、うまく回復できるかどうかも違ってきます。
で、ぼくの経験に基づく一般論として・・・
ウールなどの毛織物は、「アタリ」が出ても、表から圧力をかけないでスチームアイロンをかけると、その多くはきれいに回復しますが、ポリエステルやナイロンの混ざった生地は、それらの素材が熱によって固定される性質があるため(熱可塑性と言います)、基本的には一度「アタリ」の出たものは回復しません。もっとも、そこまで気にする必要がないことが大半ですけど。
シルクは、一度「アタリ」が出ると、なかなか元に戻らないことが多いのですが、「全く」と言っていいほど気にせずに、表から強くアイロンをかけても問題にならないシルクサテン生地などもあります。
綿や麻などの植物系の素材は、表面の質感次第ですが、あまり気にする必要はないと思います。
ポリエステルやナイロンは、上記(熱可塑性)の理由により要注意ですし、そもそも、あまりしっかりとはアイロンがかかりません。なので、最初から、アイロンがかからないことを前提にデザインを考えるほうが良いと思います。
というわけで、いくつかの生地を使って「アタリ」の出方を試してみました。
※それぞれ、50cm×25cmくらいの生地を用意し、短辺を約半分に裁断、1㎝の縫い代でミシンをかけ、アイロンのかけかたは、ドライアイロン、スチームアイロン、縫い目に水をつけてからドライアイロンの3パターン、あて布のあるなし、裏からと表からのアイロン、これらの組み合わせで行いました。
※縫い代を割った状態と、前端のラペルの折り返りなどを想定し外表にした状態を作りました。
※地の目方向の縫い目は、斜めのときの比べて、しっかりとアイロンをかけなけれな安定しないことが多く、「よりしっかりとアイロンをかけなければならない」という意味で、「アタリ」が出やすいと言えます。
まずは、紺のサマーウール。
2-1.サマーウール(紺)
2-2.縫い代1㎝で縫いました。
※この工程は、全ての生地で共通です2-3.表から水をつけて、あて布をせずにアイロン。
仕上がりとして問題ありません。2-4
青のサマーウール。
3-1.サマーウール(青)
3-2.表から水をつけてあて布をせずにアイロンをかけましたが、けっこう「アタリ」がでました。
3-3.表からスチームアイロンを押さえずに、しばらくかけると、かなり回復します。
3-4
水色のサマーウール。
4-1.サマーウール(水色)
4-2.この生地も、表から水をつけてアイロンをかけて問題ありませんでした。
4-3
黒のウールドスキン。
ドスキンやギャバジンと呼ばれるウール生地は、「アタリ」が目立つ傾向にあります。
5-1.ウールドスキン(黒)
5-2.表から水をつけてアイロンをかけると、けっこう「アタリ」が目立ちます。
5-3.表からスチームアイロンを押さえずに、しばらくかけても、それほど回復しませんでした。
5-4
ウール系のようですが、詳細は不明です。
6-1.ウール系のようですが、詳細は不明です
6-2.裏から強くアイロンをかけた状態で、「アタリ」は見受けられません。
6-3.よりしっかりとアイロンをかけようと、表から強くかけた状態で、これでも「アタリ」は目立ちませんが、ここまで強くアイロンをかける必要はないと思います。
6-4
黒のカシミヤ。
7-1.カシミヤ(黒)
7-2.裏から強くアイロンをかけた状態で、すでに「アタリ」が見えてきています。
7-3.よりしっかりとアイロンをかけようと、表から強くかけた状態で、「アタリ」がかなり目立ちます。
7-4
紺の厚手のダブルフェイスウールで、本来はダブルフェイス仕立てをする生地なので、このように普通に縫うには、かなり分厚いです。
8-1.厚手のダブルフェイスウール(紺)
8-2.裏から強くアイロンをかけた状態で、「アタリ」は気にならないと思います。
8-3.よりしっかりとアイロンをかけようと、表から強くかけた状態で、さすがに「アタリ」が目立ってきますが、ここまで強くアイロンをかける必要はないと思います。
8-4
今回は、アイロンをしっかりかけることによる結果をみましたが、どこまで「しっかりアイロンをかける」かはケースバイケースで、全ての生地を「しっかりとアイロンをかける」べきではありません。
また、縫い目に「アタリ」が出ることと、しっかりとアイロンがかかっていないことを天秤にかけて、多少の「アタリ」がでることを選択したほうが良い場合もあります。
したがって、一律に考えずに、生地によって個別に考えること、「生地にきいてみる」ことが大切だと思います。