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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 48

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生地を糸で縫って、その糸を引っ張って生地を縮めた状態のことを「ギャザー」と呼びます。
この「ギャザー」って、キレイに仕上げるためには、使う生地によったり、どれくらいに縮めるかによって、縫い方を変えた方がいいと思うのですが、今回はそのことについて考えてみようと思います。

※「見た目がキレイかどうか」という話なので、主観は入っていると思います。
※ ギャザーは中心と端で差があり、目分量なので、縮めた分量の「〇〇%」という数字は正確なものではありません。
※ 今回は、ギャザーをかけただけで、他の部品と縫い合わせたわけではなく、実際に縫い合わせると、縫い目から見えるギャザーの見た目は違ってくると思います。

写真1は、厚手の綿生地で、用途としては「春物のジャケット」という感じでしょうか。


この生地に、一針が4mmくらいの「ぐし縫い」。


40%くらいなら問題ないと思いますが、70%あたりだと、縫い目のあたりがあまりキレイに仕上がりません。


次は、同じ綿生地に一針が10mmくらいの「ぐし縫い」。


縮める比率が30%くらいだと、ちょっと縫い目が「間の抜けた」感じがしますが、60%以上縮めるなら、こちらの「ぐし縫い」の間隔の方が適切だと思います。


写真2は、厚手のウールで、かなり硬くて分厚い生地で、用途としてはコート用でしょうか。


綿生地と同じく、一針が4mmくらいの「ぐし縫い」。


この状態で、約20%(10cmの生地を8cmに)、約40%縮めてみましたが、このぐし縫いの間隔だと、20%くらいにとどめておいた方がよいと思います。


次は、同じ生地に一針が10mmくらいの「ぐし縫い」。


このくらいの間隔の「ぐし縫い」なら、50%くらいまで縮めてもキレイに仕上がりそうです。


生地は、写真2と同じですが、「ぐし縫い」を一針が約4mmの斜め方向(バイアス方向)にしました。


この「ぐし縫い」の間隔だと、約30%にとどめておいた方がよいと思います。


次は、同じ生地に一針が10mmくらいの「ぐし縫い」。


このくらいの「ぐし縫い」間隔だと、50%でも許容範囲でしょうか。


一般的には、生地が分厚く硬いほど、ギャザーで縮める比率が大きいほど、「ぐし縫い」の間隔が大きいほうが適していると思います。

余談ですが、「ギャザーにするとき、手縫いよりもミシン縫いの方がやりにくく感じたけど、それは何故?」との質問を受けたのですが、ほとんどの場合その通りで、手縫いだと、糸を引くときに、いつもてきとうな摩擦抵抗が働くのですが(写真4-1)、ミシンだと、糸を引くときに、ある時点から一気に摩擦抵抗がなくなり(写真4-2、ミシンの糸調子にもよります)、ギャザーの分量の配分がしにくいはずです。
これは、セットインスリーブの袖の「いせ込み」や、その程度しか縮めない場合や、極端に大量に縮める場合は、あまり違いはありませんが、適切な量のギャザーを適切な位置に入れたい場合、違いが出ると思います。