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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 45

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ステッチは、服を構造的に安定させる効果もありますが、ここではデザインの効果について考えることとし、デザインとしてのステッチを考えるときには、「影を見せる」効果と、「糸」を見せる効果があり、双方を単純に分けることはできませんが、どういう効果を意図するかの方向性は決めておくべきだと思います。

基本的には、同色の糸でステッチをかけると「影を見せる」、異色の糸でステッチをかけると「糸を見せる」、ということを意図することになりますが、異色の糸で「影を見せる」効果のみをねらうことはないと思いますが、同色の糸で「糸を見せる」効果をねらうことはよくあります。
また、異色の糸を使ったからといって、「糸を見せる」効果があるかどうかや、どれくらい効果があるのかは、ケースバイケースです。


写真2は、60番(細目)の糸、細かめの針目でのミシンステッチをかけたものですが、この生地と糸の組み合わせだと異色の糸を使っても、ほとんど糸自体が見えないので、「糸を見せる」効果をねらっても意味がないと思います。
ただ、金糸や銀糸などの光る糸だと、糸が目立ってくるので効果的かもしれません。


写真3は、20番(太目)の糸、粗めの針目でのミシンステッチをかけたものですが、この生地と糸の組み合わせで異色の糸を使うことによって、「糸を見せる」効果をねらえるように思います。
また、生地によっては、同色の糸でも「糸を見せる」効果があると思います。

一般的には、糸は太ければ太いほど、針目は粗いほど「糸を見せる」効果がありますが、「どこを強調したいか」など、全体のバランスを考えて選択するといいと思います。
また、中途半端に「糸を見せる」効果をねらっても意味がありません。


写真4は、絹の穴糸、バックステッチ(星どめ)でのハンドステッチをかけたものですが、この生地だと、糸を異色にしてもあまり「糸を見せる」効果はありませんが、もう少し均一な色の生地では、異色の糸、あるいは同色の糸でも「糸を見せる」効果を狙えると思います。


写真5は、綿のレース編み糸、ストレートステッチ(なみ縫い)でのハンドステッチをかけたものですが、この組み合わせでは、糸を異色すると十分に「糸を見せる」効果はあり、同色の糸でも「糸を見せる」効果を狙えると思います。

一般的に、バックステッチ(星どめ)よりも、ストレートステッチ(なみ縫い)のほうが、表面に露出する糸の距離が長くなるため、同じ色の糸を使ったとしても「糸を見せる」効果が大きくなる傾向があります。
また、表面に露出する糸の距離は、縫い方によっても変えられるので、「どれくらい糸を見せたいか」によって、方法を選択するべきだと思います。


これらの効果は、生地と糸の関係の他に、ステッチをかける箇所、ステッチの本数や幅などによっても結果が違ってくるので、全体のデザインの意図と関連づけて考えるといいと思います。