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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 36

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和洋折衷コートの形について考えてみる

「着物にも洋服にも着られるコート」というだけなら、作るのは簡単なことで、着物を着た状態に合わせると、ほとんど問題がありません。
ただ、それで、洋服を着た時でも着られますが、実際に着るかと言うと、多くの場合で着ないと思います。
「着物にも洋服にも」というのは、コーディネートの相手が違うことのバランス感覚が求められ、その一番の課題は「襟」だと思っています。

※ここをクリックすると、写真の作品ページに移動します。

このコートは襟を立てると、スタンドカラー、襟を折り返すとショールカラーになるようにデザインしました。

着物(特に女性)は、洋服と比べて襟を後ろに抜いて着るので、下の写真のように、その上に着るコートも、通常着方が変わってきます。
洋服の上に、コートの襟を抜いて着ることも可能ですが、そういう着方を許容する人や世代は、限定的だと思います。

着物に合わせることだけを考えるのなら、コートの襟ぐりを後ろに下げることで解決するのですが、そうすると洋服に合わせるときに、前に倒して着ることになります。
コートを、着物に合わせて作り、洋服に合わせる時に、前に倒して着るのと、洋服に合わせて作り、着物に合わせる時に、後ろに倒して着るのとでは、全体のシルエットを考えると、後者の方が双方の折り合いを付けやすいと思います。

そのような考えで、襟を二種類の着方ができるデザインにしたのですが、着物と合わせて襟を立てて着ると、ちょっと襟の前の部分キツくなり、着物と洋服、襟を立てる、折り返す、と2×2の四通り、というよりは、「三通りに着られます」というったことろでしょうか。

三通りを四通りにするために、「襟の前の部分をより下げていく」という選択肢もあるのですが、今度は洋服と合わせた時のデザインが問題になるので、見送りました。

結局のところ、「バランスの問題」ということなのでしょうね。


襟と同じく、「袖」も、 両方に合わせて着るなら、考えなければならないポイントで、 基本的には着物に合わせた形の袖にすることになるのだと思いますが、コートの袖の中に、着物の袖が無理なく自然に入れられる範囲で、出来るだけ細く、腕を下したときに、できるだけスッキリを見えるよう、袖の傾斜や分量に工夫を凝らしています。