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ちょっと(かなり?)マニアックな服飾技術の話 (洋服つくりの技術を紹介してます) 14

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袖袖の機能性について考える

ジャケットの袖付けを、機能性がよくなるように型紙を修正してみました。

ジャケットの機能性とは、腕が上げやすいことと、肘を曲げやすいことがあると思いますが、そのために行うべきことは単純です。

生地が同じで、各所の分量(幅)が同じであることを前提とすると、腕を上げやすくするには、青と緑の線の部分の線を外側に書き換える(ゆとりを増やす)こと、肘を曲げやすくするには、赤の線のカーブを直線的なものから、より曲線的にすることです。

昔の紳士服で、この機能性の極端に求めたものを見かけることがあったり、舞台衣装や、ダンスの衣装なんかでも、思いっきり機能性を追求したものも見かけます。

では、なぜ、このての機能的なジャケットを、普段のもので見かける機会が少ないかと言えば、腕を下した時に、見た目が落ち着かないからと、脇の下に服がぶつかって着心地が悪いからだと思っていて、生地を作る技術や、仕立てる技術は劣化した側面もあると思っているけど、べつに、型紙を作る技術が劣化したわけではない、と思います。

「動きやすさ」は機能だけど、「動きにくさ」も機能だと思うので、優越の話ではないと思いますが、世の中は楽な方向に向かっていると思うので、こういう小さな調整を続けて、やがてオーソドックスなジャケットの形も変化していくのだと思います。
「理想の袖付けはない」と、思っていますが、落としどころの優先順位が変化する、ということはあるでしょうね。

袖の機能性について考える01


そして、左のデニムが、その新しく作った型紙のジャケットで、右の以前に作ったジャケットより、左の新しく作ったジャケットの方が、より肘のあたりのカーブが強く、袖下カーブの調整を含めて、腕を前に動かしやすく、肘を曲げやすくしました。
といっても、写真を見て分かる人はいないと思いますが。(;^ω^)

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袖の機能性について考える02袖の機能性について考える03

本来は、同じ生地で袖以外を同じ形にした方が、比較としてはよりよいのですが、生地の伸縮性が近い生地、丈以外の他の分量を同じにして、別のデザインにしました。
両方とも綿素材の最低限の伸縮性しかないので、生地としては動きにくく、左のデニム生地の方が、よりゴワゴワしています。

この程度の変化で、劇的に着心地が変わるわけではありませんが、想定通りの結果だと感じました。
ただ、他の条件が違っているので、あえて気にしなければ、その部分の変化だとは気付かないレベルだし、もっと動きやすくしたければ、型紙の調整よりも、伸縮性のある生地を使ったほうが、ずっと効果的だと思います。