見返しのパイピングには凝ったステッチが施され、細やかな手仕事や異なる素材の組み合わせが、単なる機能性を超えた美しいデザインを生み出していました。
このような服は、洋服を作る人ならぜひ観察し、可能であれば同じ工程で一度作ってみるべきだと思います。現在の技術は過去の技術の蓄積の上に成り立っており、突然生まれたものではありません。そのため、知識として学ぶだけでなく、実際に経験を通じて理解しておくことが望ましいのです。
ただし、「当時の技術は素晴らしい」と盲目的に称賛するのでも、「今さら必要ない」と古い技術として切り捨てるのでもなく、しっかりと見極め、分類することが重要です。
ここで区別すべきなのは、「しなくなったこと」と「できなくなったこと」、そして「かざり」と「(構造的・機能的な)正しさ」の二つです。
「正しさ」をどのように定義するかは難しい問題ですが、ここでは「工程によって望んだシルエットが生まれる」「型崩れしにくくなる」「着心地が向上する」といった技術を「正しい」とし、形そのものの「正しさ」には触れません。また、「かざり」には(構造的・機能的な)意味がなく、「正しさ」には意味があるとします。ただし、襟のステッチのように「かざり」と「正しさ」を兼ねた技術も存在します。
かざり? 正しさ?
今回のコートでは、パイピングのステッチは純粋な「かざり」であり、「正しさ」といえるのはポケットや袖裏の始末でしょう。しかし、ここまで細かく縫う必要はありません。このような装飾技術はメンズ服で発展してきたもので、レディース服ではあまり見られません。その背景には、メンズ服は表のシルエットだけでは個性を出しにくいという理由があります。
現在では、特に裏側の装飾は減少傾向にあります。その要因として、コストや職人の技術の問題だけでなく、「シンプルで軽いものが好まれるようになった」「薄手の生地では装飾が表面に悪影響を及ぼす」などが考えられます。そのため、この技術は「しなくなった」といえるでしょう。
素材については、天然素材に関しては当時のもののほうが品質が良いと感じます。しかし、実際に着ると「硬い」「重い」と感じることもあるため、好みは人それぞれです。とはいえ、当時のような品質の生地は、今では入手「できなくなった」といえるでしょう。
また、時代の変化により、かつては「正しい」技術とされていたものが、現在では単なる「かざり」になった例もあります。素材の進化や機械化によって工程が変わると、求められる「正しさ」も変わるのです。近年で最も大きな変化の一つは、接着芯の採用でしょう。そのため、接着芯が普及する以前の技術は、現代の洋服作りにおいては一度見直してみる価値があると思います。
かざり? 正しさ?
すべての技術に「正しさ」があるわけではなく、また、すべてを「正しく」する必要もありません。中には、誰かの思いつきが偶然定着しただけの技術もあります。洋服作りの世界は、物理的な根拠よりも職人の経験に基づく技術が多く、さらに「正しくなくても成立する」ため、淘汰されにくい分野です。しかし、「着る人の喜びにつながれば、それでよい」ともいえます。
ただし、技術が生まれ、定着した背景には必ず何らかの理由があります。その背景を理解することは、新たな技術を取り入れたり、変化に対応する際に大いに役立ちます。
新しく服を作るとき、技術の歴史を知っておくことは、その服に「厚み」をもたらしてくれるはずです。
2025年2月11日