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作図は難しいもの?

作図って、本当にそんなに難しいんでしょうか?

授業中、学生から「教科書に載ってる型紙の作図の説明が難しい」って言われたとき、「まあ、簡単にするのは難しいかもね」と軽く返してしまったんですけど、あとになって気になり始めました。自分はもう作図に慣れているので、「難しい」という感覚はなくなっているけど、確かに教科書の内容は複雑で、わかりやすいとは言えない、と感じます。型紙の原型から作図するのは、どうしてもある程度の難しさがつきものです。完全に簡単にはできないけど、それでも今の教科書よりわかりやすい方法があるんじゃないかと思います。
ただ、難しさって避けられない部分もあるし、その先に本当の面白さや深い理解があると思うんです。難しいからこそ、そこに魅力があるというか。既存のテンプレートに頼り続けるのもひとつの方法ですけど、それだと応用はきかないし、新しい価値も生まれないですから。

最近の「手芸本」なんかを見ると、作図の仕方が載っていないことが多くて、実物大の型紙が付属しているだけです。これは多分、読者が「簡単に作りたい」って思っているからで、「型紙を自分で作れるようになりたい」っていう気持ちが薄れてきているから、そうなったのだと思います。こうして提供する側も合わせてしまうと、だんだん誰も型紙の構造を理解できなくなって、「作れない」「作る必要もない」ってなってしまう悪循環が生まれるかもしれません。結果として、一から型紙を作れる人はどんどん少なくなってきています。

時代が変わって、授業で型紙の作図を学ぶ意味も少し変わってきたのは確かです。昔、街の洋装店で洋服を縫っていた時代と、今みたいにコンピュータで作図ができる時代とでは、作図の意義もまったく違います。でも、服の形や構造を理解するためには、やっぱりマウスでクリックするだけじゃなくて、自分の手を動かして、実際の物に触れる経験が必要だと思います。

今の私にとっては、ただ見本通りに作図するよりも、服の「意味」を理解することのほうが大切だと思っています。学生がすぐに理解できるとは思いませんが、授業ではできるだけその「意味」を伝えるようにしています。また、歴史ある学校でみんなが同じ作図方法を学ぶことには、「共通の言語」を持つような力があると思います。その力は大事にするべきだし、作図を理解するには、読解力のような力が必要で、その理解する過程や、つちかった力には普遍性があると思います。

作図って難しいのか、という問いは、「難しいから」と敬遠する人と、「昔からのやり方が正しい」と信じている人の間には対話が成立しないので、実は、この両者が話し合うことこそが一番「難しい」ことかもしれないです。