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「メンズ服」と「ウィメンズ服」とを比べてみると

伝統的なジャケットの製作において、メンズとウィメンズでは体型の違いから型紙の形状が異なるのは当然ですが、実際には型紙の作り方から縫製の仕方に至るまで、性別による違いがなくても良い部分まで異なるのが現状です。
私は、「なぜこの違いがあるのか」を知りたくて、さまざまな資料を調べてみましたが、納得のいく理由にはまだたどり着いていません。たとえば、メンズの仕立て屋がウィメンズのジャケットを作ることは珍しくありませんが、その逆のケースはほとんど見かけません。

ウィメンズ服の型紙作成では「作図技法」(文化式、ドレメ式など)や「立体裁断」が使われることが多いのに対して、メンズ服では採寸したデータから直接型紙を描き始めるのが一般的です。私自身、メンズ服で「作図技法」や「立体裁断」を用いる場面を見たことはありません。メンズ服にも「作図技法」は存在しますが、どの程度実際に使われているかは不明で、あまり実用的でないようにも感じます。
メンズ服のシルエットはウィメンズ服と比べてバリエーションが非常に少なく、構造もほぼ定まっているため、このような型紙の作り方が定着しているのだと思います。工場で製作されるメンズ服も、昔ながらのテーラーの技術を機械化したに過ぎず、伝統的な製法を踏襲しています。そもそもメンズとウィメンズのジャケット製作は互いに独自の発展を遂げ、現在の状況に至ったため、明確な理由がなくともそれぞれの方法が定着したのかもしれません。

縫製の技術にもメンズとウィメンズそれぞれの背景があり、どのような縫い方でも本来問題ないはずですが、伝統的な方法から逸脱すると違和感が生じることがあります。ウィメンズのジャケットをメンズの技術で作ると、個人の好みはあるものの「そういうデザインもあり」という評価を受けることが多いのに対し、メンズのジャケットをウィメンズの技術で作ると、少し違和感が残る場合があります。

海外のラグジュアリーブランドや有名な日本のデザイナーズブランドでも、メンズジャケットはメンズの技術的背景に基づいて作られているようです。私個人としては、メンズジャケットを製作するのであれば、少なくともメンズの技術的背景を理解した上で取り組むべきだと考えています。
ただ、最近では一部のメンズジャケットにおいて、従来のメンズ服の技術的背景を踏まえていない製作方法が見受けられるようになり、今後の動向が気になっています。