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「意匠」と「構造」の妥協の関係

ほとんどの洋服は、1枚の布でつくられているわけではなく、どこかに切り替え線があり、切り替え線をつける理由は、「意匠」と「構造」とに分けられます。

「意匠」は見た目のことなので、理由を求めることを最後にはできなくなりますが、「構造」には理由があり、常に理論的に説明できます。
切り替えることの構造的理由は、生地の幅が足りない、別の部品に分けたほうが縫製工程が合理的(簡単)などもありますが、「望んだシルエットにするため」というのが、主な切り替える理由です。

デザインを検討するときには、通常は、まずシルエットを考え、そのシルエットを実現させるには、切り替え線が必要か、また、どこに必要かを考える、という順序になります。
切り替え線が構造上不要な箇所を切り替えることはできるので、「意匠」として選択し、デザインを決めることができますが、構造上必要な箇所は切り替えなければならず、そのようなシルエットでは、「意匠」として切り替えのないデザインを選ぶことはできません。



洋服が、円筒形や円錐形のようなシルエット(図1)なら、1枚の布でシンプルに構成することができますが、フィット&フレア(図2)や、コクーンシルエット(図3)などでは、複数の部品やダーツによる切り替え線が必要で、構造上必要なら、どこかを切り替える必要がありますが、その選択は「意匠」の範疇になるので、見た目の好み、着やすさや作りやすさ、使用する生地の用尺などを総合的に検討し、デザインを決めることになります。
ちなみに、個人的には「意匠」と「構造」は一つのこととして考え、切り替え線が「構造」なのか「意匠」なのかが分からないような、渾然一体となったデザインを理想としています。


 
「意匠」としての切り替え線がたくさんあるデザインなら、シルエットの選択は比較的自由ですが、切り替え線の少ないデザインでは、求めるシルエットと、「どのように妥協するか」を考えなければなりません。
「意匠」と「構造」は、つねに妥協の結果であり、無限に理想を追い求めることはできません。
したがって、「いかに美しく妥協するか」が、デザインの役割で、着た人や見た人に、妥協したことを悟られないようなデザインが、「完成度の高い洋服」、だといえます。