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「衣服のサステナブルについて考えてみる」2020年10月編

1.衣服の「サステナブル」って、どんなこと?

衣服の「サステナブル」とは、主に「環境負荷(エコ)」に関連する項目と、経済を含めた「作る過程の持続性」が主な課題で、以下ではそれらについて述べたいと思います。

ボクは、このタイトルに日付を入れました。それは「サステナブル」に対する見方が、時代による変化が大きく、ある種の「流行性(ファッション性)」を感じているからです。

「唯一の完璧なエコとは、何も新しく生産しないことである」と話すことがあるのですが、このことを究極的に推し進めてしまうと、技術や表現の手段が途絶えてしまい「作る過程の持続性」が実現されません。
仮に、特定の分野での雇用が途絶えたとしたら、その人たちを他に移行させたり元に戻すことは簡単ではありませんが、技術が途絶えてしまうと、それ以上に回復させることは容易ではありません。
ボク自身、一人の作り手として、作る事を継続、発展させていきたいし、次の世代の人たちが、さらに発展させていってくれることを願っています。

何事も、バランスの話です。

2.サステナブルな衣服?

「サステナブルな衣服」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

「オーガニック素材」に「草木染」、そんな服を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
地球環境問題にスポットを当てた「アース○○」などのフェアでは、そのような服を販売しているブースが多数派だと思います。
それらの衣服の多くは、「脱石油」がキーワードだったりします。

一方で、真逆の考えだと言える、「リサイクルされた石油系素材を使う」というアプローチも数多くあります。
リサイクルナイロンを積極的に提案している、ラグジュアリーブランドも多数あり、「脱石油」が唯一の方向性では決してありません。
むしろ将来、「天然素材の服を着るなんて、『野蛮だ!』」という世の中になるかもしれません。

もっとも、「リサイクルナイロンは新しく石油を使っているわけではないので、『脱石油』である。」という主張も成立しえますが。

また、最近は敬遠される傾向にある「毛皮」の代替素材である、「フェイクファー(エコファー等とも言われています)」も、その多くは石油系素材です。
ちなみに毛皮は、大切に扱うととても寿命が長く、縫い目が目立たないという特性もあり、リメイクに適した素材なので、少なくとも既に世の中に出回っている毛皮を最後まで使い切ることは、サスティナブルの観点からも、とても大切なことだと思いますが、世間が許してくれない傾向にあるようです。

3.入り口? 出口?

上記の例は「入り口のエコ」の話で、それと同等か、あるいは、それ以上に重要なのは「出口のエコ」の話で、衣服として使われた後のリサイクルを製造段階から想定しているものもあり、その典型が「全ての部品をナイロンで作る」という衣服です。
「一着の衣服を全て同じ素材で作る」というのは、作る服の形を限定してしまえば出来ますが、実際にはほとんどありません。
日本の絹の着物は、表裏面は全て絹の素材でできていますが、中に使われる芯は絹製ではないし、まして、糸や、ボタンやファスナーなどまで使われる洋服を考えるとすると、単一の素材を実現できるのはおそらくナイロンくらいです。
かつて開催された長野オリンピックの日本代表のユニフォームは、全ての素材にナイロンが使われていて、「そのまま溶かして『リサイクル』ができます」という話をされていた記憶があります。厳密には、素材に色をつける染料などが、ナイロンではない可能性がありますが、ここまで素材を単一化ができるのは、ナイロンならではです。

4.リサイクルできる? リサイクルされている?

「草木染された天然素材はエコだ」というイメージはあると思いますが、草木染された天然素材はエコであるか否かは、作られる「量」によるのだそうです。
少ない量なら、廃棄される染料などは生態系に還ることができますが、多ければそうはならず、逆に、石油系素材のリサイクルは、一定以上の「量」がないと効果がありません。
「リサイクルができる」こと自体はとても良いことなのですが、「リサイクルができる」ことと「リサイクルされている」こととは全く別のことで、大切なのは後者です。

現実にリサイクルされるには、特に石油製品ではリサイクル経路が必須で、その実現には、一定以上の規模や、多くの人の協力が必要になってきます。
草木染された天然素材なら、「土に還す」という選択肢もありますが、これも量によりそうですし、衣服全体の全てが天然素材で作られている事は、あまりありません。

5.リサイクル? リメイク?

リサイクルに比べて、リメイクは個人でも実現させることが可能なので、模索してみるべきだと思います。「アップサイクル」と呼ばれることもほぼ同じです。

ただ、それが実質的な意味で「エコ」か? と問われると、実際のところケースバイケースで、作り直す際に使用するエネルギー量や、どれだけ新しい素材の使用を抑制できるかにより、特に後者の問題は要注意です。
また、せっかくリメイクしたものを、結局ほとんど使わないまま捨ててしまう、ということも起こり得ます。

7.衣服が衣服でいる期間と、その傷み方は大事かも

個人が、衣服のサスティナブルについて実行できることとしては、「長く大切に着る」ことが、最も単純で有効です。

長く着ることには、着る期間と、着る回数があり、この両者は関連がありますが、対策方法が異なります。
最初から「オーソドックスなデザインの高品質な服」を選ぶことが、これらの条件に合致することになりそうですが、これもバランスの話です。

衣服が物理的に傷んで劣化してきても、それを「味わい」だと思え、愛着を保てる、また愛着が増すことは、長く着ていく上でとても大切な要素で、これは主観が入ることではありますが、天然素材の方が有利だと思います。

ボクは、傷んできたジーンズには愛着がありますが、傷んだナイロンバッグに愛着は持てません。
また、ウール素材の服では、生地の品質が「痛みにくさ」や「良い痛み方」につながるように感じています。
色(染色)の劣化に関しては、石油系素材の方が劣化しにくく、天然素材、特に綿などは劣化が目立ちやすい傾向にありますが、色(染色)劣化した服を着つづけようと思えるかどうかには、服による一定の傾向があるようです。

6.サスティナブルな商品を買う(売る)? サスティナブルな暮らしをする?

世の中で行われている行為の多くは、今のところ「サスティナブルな商品を買う(売る)」という段階だと思いますが、 大切なのは「サスティナブルな暮らしをする」ことです。

サスティナブルな服に買い替えたところで、それが生活にかかるエネルギーを抑制できる一部のケースを除いて、余計なゴミが増えるだけです。
では、サスティナブルな商品を買うことが、「サスティナブルな未来」に対して全く無意味かというと、そうではなく、サスティナブルな商品を買うことが、サスティナブルな未来を象徴させることができます。

でも、それ以上の効果はありません。

意識が変わることによって、行動が変わります。
無理やり外部から行動を変えさせることも出来るでしょうけど、あまり長続きしないと思います。

7.気分は大切ですが・・・

環境問題全般に言えることですが、「サスティナブル」などのキーワードを掲げる広告や商品の多くは、作り手にその自覚のあるなしに限らず、「サスティナブル気分」を与えるための消費喚起に過ぎず、こういう活動は、現実を何も解決しないか、むしろ悪化させるだけのイメージ戦略も混ざっているとは思うけど、多少のヒステリックさを含めて、そっちに向かうのが、世の中の方向性なんだと思います。

ボクたちの社会は、そのことを乗り越えるしか道がなく、それは「楽観論」でも「悲観論」でもなく、単にそういう順番で、その後のことが問われてくるのだと思います。