「リメイク」という言葉を調べてみると、「過去に作られた作品を新たに作り直すこと」といった説明が出てきます。 この言葉に近い表現として「リフォーム」があり、こちらも調べてみると、「リフォームは、主に既存のものを元の状態に近づけたり、性能を向上させたりすること。一方でリメイクは、元のデザインを大きく変更したり、まったく別のものに作り替えたりすること」とされています。
たとえば、ジャケットの身幅を少し細くするような作業は「リフォーム」と言えます。ただ、その変更の度合いによっては「リメイク」と呼ぶべき範囲に入ってくることもあります。両者の間には重なる部分が多く、すべてのケースを、はっきりと区別するのは難しそうです。
「リメイク」再考
「リメイク」再考
リメイクには、大きく分けて二つの方向性があります。
ひとつは、「リメイクした痕跡が残らないことを理想とする」タイプ。もうひとつは、「痕跡が残ることを前提とした」タイプです。
前者は、仕上がりの自然さや完成度を求めると、技術的にとても難易度が高くなります。痕跡をなるべく残さない複雑なリメイクは、洋服のデザインによっては、最初からつくるより難しいこともあり、安易に取り組むことはオススメできません。縫うこと自体の技術も問われますが、それ以上に、「どこをほどいて、どれだけの修正をする」といった、その場での判断力が問われます。
一方で後者のリメイクは、技術的なハードルはそこまで高くありませんが、デザインのセンスが問われる傾向があります。痕跡が残ることを前提としたリメイクは、洋裁に慣れていない人でも、どんどんと挑戦していくと良いと思います。むしろ洋裁のベテランより、縫い目のキレイさで劣っていても、より魅力的なリメイク服になる可能性は十分にありますが、出来上がるモノの雰囲気や印象が個性的になりやすいため、着る人の好みが分かれやすく、特に年齢を重ねた方には敬遠されがちかもしれません。
もしも「服は、リメイクやリフォームして着ることが当たり前」といった状況を想定するのであれば、その服を最初につくる段階から、たとえば解体しやすくしておくとか、サイズ調整がしやすいように縫い代を多めにとっておくなど、手を加えやすい構造にしておくことが望ましいと思います。
ただ、それにはいくつかのデメリットも考慮しなければなりません。
1.制作時に、通常よりも余分な手間がかかる
2.縫い代を多く残すことで、ゴワつきや重さが増し、着心地が悪くなる可能性がある
3.デザインの自由度が制限される
4.全体の完成度が下がってしまうことがある
こうした理由から、リメイクやリフォームのしやすさを考慮してあらかじめ作られた服は、現代ではあまり見かけません。現在主流となっている、工業的に多様なデザインを展開する仕組みや、大量流通のシステムとは、そもそも相性があまり良くないと思います。
「一度縫った服をほどいて、もう一度縫い直す」という点においては、日本の着物がまさにそうした思想を体現していますが、洋服のリメイクを考えるうえでは、あまり参考にならないことも多いです。もちろん、着物の構造をヒントにして洋服を作ることも可能ですが、その場合、どうしてもデザインが限られてしまう印象があります。
むしろ参考になりそうなのは、舞台衣装や、布が貴重だった時代に作られた洋服たちです。限られた素材の中で、工夫しながら手を加えて着続けていたような服には、現代のリメイクにも活かせる知恵やヒントが、たくさんつまっているように思います。
「リメイク」再考
「リメイク」再考
自分で考え、工夫していく過程で気づくこともあります。そして、その姿勢自体にも価値があると思います。
2025年6月28日