山村ドレススタジオ > オーダーメイドについて

洋服をオーダーすることに、どのようなイメージをお持ちですか?

洋服のオーダーメイドは昔からあるものですが、オーダーメイドが当たり前の時代と既製服が当たり前の今の時代とでは、ずいぶんと役割が違うように感じています。
そこで、他の3つの職業に例えて、ドレスメーカーの役割を記してみました。
ちなみに、紳士服オーダーを作る人のことを 「テーラー」 と呼ばれているのに対して、婦人服オーダーを作る人のことを 「ドレスメーカー」 と呼ばれています。
「オートクチュール」 としている人や店もありますが、制作する工程等の違いから、その表現は避けました。
昔からある呼び名なのですが、現在、そう名乗ってる所は、ほとんど無いと思います。

ドレスメーカー ≒ 似顔絵師 ?

寸法が完璧に合っていてデザインがしっくりこない服と、寸法は完璧には合っていないけどデザインがしっくりくる服と、どちらが良いですか?
僕は、後者が良いと思って作っているし、どれくらい合っていないか度合問題ですが、多くの人にとっても後者が良いのではないでしょうか。

身体に添わせることが最優先ではなく、雰囲気や心に添わせることの方が大事。
もちろん、必要な採寸はさせていただいていまが、靴や下着を作る人のような厳格さを求めているわけではなく、そういう意味で、ドレスメーカーの役割は、設計図を書くというよりは、似顔絵を描く行為に近いと考えています。
そのために、いつも心がけていることは、「知ろうとすること」。そこに一着の洋服を、わざわざ作ることの現在の価値があるのではと考えています。

ドレスメーカー ≒ パーソナルコーチ ?

パーソナルコーチの役割ってなんでしょうか?
お客様の中にある、まだ意識されない気持ちに光を照らすこと。
目的地にたどり着く道筋を、一緒に探し出すこと。

役割は様々でしょうけど、上記とするならドレスメーカーとパーソナルコーチは、役割に共通点がありそうです。
技術的なことを別にすれば、目的は服ではなく、生き方だと考えています。

これはあくまで感覚的な話になりますが、お客様と御一緒に一着の服を作り上げられたらと願っています。

ドレスメーカー ≒ 料理人 ?

洋服のオーダーメイドで出来ること、出来ないことの例えとして、料理店に行くお客様と料理人との関係に例えてお話しすることがあります。

馴染みの料理人なら、お客様の好みに合わせて麺の硬さを変えたり、メニューにはない食材の組み合わせをしたり、スープの味付けや濃さを調整できるかもしれまません。また、オリジナルのメニューをつくることも出来そうです。
たまたま手に入った食材を使って、即席の調理ができるかもしれません。

でも、 「どこか他の有名店の味にして」 などという注文に、うまく応えられる料理人はいないと思います。
料理人がそこの味を再現することを試みたとしても、オリジナルのもの以上のものにはならず、お客様の喜びにはつながらないからです。

洋服のオーダーメイドでも、それと同じような限界はありますが、既製品では絶対にかなえられない柔軟性があります。
世の中の全ての服を網羅することはできませんが、毎回、様々な新しいことに挑戦してきて、その蓄積には自信があります。