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「土に還すことができる服」

「土に還すことができる服を作りたい」、というイメージは以前からありました。
「土に還すことができる服」は、全ての材料を自然素材で構成する、ということになりますが、現在の洋服でこの条件を満たすことは難しく、「芯」や「糸」はポリエステルが主流ですし、ファスナーやカギホックやゴムベルトなどは使えません。
このように、デザインや仕様の制約のあるなか、今回のジャケットの生地は、紙の繊維で作られたデニムで、副資材は、綿の糸と、木のボタンのみで構成しました。
通常、芯が必要になる箇所には、生地を二枚に重ね、表から見えるようなステッチを施し、これは、制約をプラスに転じさせるデザインです。
しかも、この紙の繊維、「抗菌効果」があり、地球にとっても着る人にとっても健康的です。

と、ここまでは、良いことづくめの印象もありますが、一方で、紙の繊維には欠点もあります。

繊維としての伸縮性が少なく、表面がサラッとした感じで、縫いにくいです(慣れていないことが、縫いにくい理由の一つでしょうが)。
これは良し悪しの話ではありせんが、繊維の性質の違いにより、実際に着てみると、綿のデニムとは、着心地もかなり違います。
あと、繊維の扱いの難しさや、供給の少なさもあり、生地の価格が高い。

さまざまな課題はあるのものの、可能性の高い「土に還すことができる服」というテーマ、これからより発展させていきたいと思います。

※「土に還すことができる服」いっても、「都心に、還すことのできる土なんて、どこにあるの?」という問いはありますし、大切に着てもらえれば、土に還す必要はありません。
※今回の使用素材の詳細は分かりませんが、生地や糸の染料や、木のボタンの表面加工剤まで、自然素材で構成することが目標です。